最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)429号 判決 1967年10月27日
上告人
堀久八
右訴訟代理人
石川元也
被上告人
上条ハルエ
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人石川元也の上告理由第一、二点について。
知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をしたとしても、いわゆる停止条件を付したものということができないことは当裁判所の判例とするところであり(最高裁判所昭和三二年(オ)第九二三号、同三六年五月二六日第二小法廷判決、民集一五巻五号一四〇四頁)、売主が農地を宅地化した場合でも、知事の許可につき民法一三〇条を類推適用し、買主は条件を成就したものとみなすことはできないと解するを相当とする。
しかしながら、農地法の対象とする農地が現況主義に基礎をおくこともまた当裁判所の判例とするところであり(最高裁判所昭和三四年(オ)第四二号、同三五年三月一七日第一小法廷判決、民集一四巻三号四六一頁)。上告人が本件売買後に本件土地に土盛りをし、地上には建物が建築され、そのため本件土地が恒久的に宅地となつていることは原審が適法に確定したところである。そうとすれば、本件土地は農地の売買契約の締結後に買主の責に帰すべからざる事情により農地でなくなり、もはや農地法五条の知事の許可の対象から外されたものというべきであり、本件売買契約の趣旨からは、このような事情のもとにおいては、知事の許可なしに売買は完全に効力を生ずるものと解するを相当とし、そして、被上告人の本訴はこの趣旨の請求をも含むと解される。したがつて、原判決はその理由において一部あやまつているが、結論において相当である。その他原判決には所論の違法はない。論旨は採用できない。
同第三点について。
所論の点についての原審の確定判断には所論の違法はない。論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)